今週1週間(11/4~11/10)で日経新聞一面に取り上げられた記事の中で、私が独断と偏見で選んだ3つの記事をピックアップしました。
それぞれの記事について、わかりやすく解説していきます。
UAゼンセン「賃上げ6%」目標継続 春闘で高水準の賃金引き上げ要求について
記事概要
国内最大の産業別労働組合であるUAゼンセン(永島智子会長)が、2025年春季労使交渉(春闘)1に向けて、賃金引き上げの目標を「全体で6%」とする方針を明らかにしました。
これにより、従業員の賃金改善と、中小企業やパート従業員の賃金格差を是正することを強く求める姿勢が示されています。
特に、パート従業員に関しては2024年の目標を上回る「7%」の賃上げを目指す方針で、流通業やサービス業などで働く多くの労働者にとって収入の底上げが期待される内容です。
背景
UAゼンセンは、流通や繊維、サービス業といった幅広い産業に属する約2200の労働組合が加盟しており、約190万人の組合員を抱える大規模な組織です。
これまでの交渉でも、組合員の生活向上と収入の安定を目指して積極的に賃上げを要求してきました。
日本全体で物価が上昇し、生活コストが増える中で、賃金の上昇を確保することは生活の安定を支えるために重要な課題となっています。
2024年の春季労使交渉では、定期的に昇給する「定期昇給」と、基本給自体を底上げする「ベースアップ(ベア)」を含め、全体で6%の賃上げを実現することが目標とされていました。
今回の2025年交渉においても、この6%の基準を継続する方針が示されました。特にベア部分は4%とされ、基準賃金の引き上げに力を入れています。
ベアは、給与全体の底上げにつながるため、労働者の生活を支える上で大きな意味を持ちます。
賃上げ目標の意義
賃上げ率の目標は、UAゼンセンの傘下にある各労働組合が企業と交渉する際の目安になります。
この目標が示されることで、各労組が統一的な基準を持ち、企業に対して労働者の生活改善を求める力が強まります。
さらに、流通やサービス業といった業界はコロナ禍で厳しい状況を経験してきましたが、賃金の改善を通じて人材の流出を防ぎ、労働環境を向上させることが期待されています。
他の労組や業界への影響
UAゼンセンが示した6%の賃上げ目標は、日本最大の労働組合である「連合」が目指す2025年の賃上げ目標よりも1ポイント高い水準です。
このため、他の労働組合や業界に対しても、賃金引き上げの重要性を示す象徴的な意味を持っています。
また、自動車や電機といった製造業を中心とする産業別労働組合も、同様の賃上げ目標を掲げる可能性が高まっています。
これが他の業界全体に波及することで、賃金引き上げの動きが日本全体で広がることが予想されます。
今後の見通し
UAゼンセンは、引き続き加盟する労組と共に交渉を進め、2025年の春季労使交渉で6%の賃上げを目指します。
今回の目標は、物価の上昇に対応し、生活の質を向上させるために必要な水準とされており、特にパート従業員の賃金が他の正社員と比べて低いことが課題とされています。
この格差を是正することで、より公平な労働環境が実現され、サービス業や流通業で働く人々の生活改善につながることが期待されます。
社会への影響
賃金引き上げが進むことで、個人の所得が増加し、消費も活発になると考えられます。
これにより経済全体の活性化が期待され、さらに物価上昇に対する負担が軽減されることで、国民の生活の安定にもつながります。
また、賃金が改善されることで、企業側も優秀な人材の確保や定着が容易になるため、業界全体の生産性向上やサービス品質の改善にも貢献する可能性があります。
一方で、企業にとってはコスト増加となるため、利益率の低い企業や中小企業では経営が厳しくなる可能性もあります。
そのため、政府や自治体による中小企業支援策が重要になるかもしれません。
このような背景を踏まえて、2025年の労使交渉は、今後の日本経済や労働市場全体に大きな影響を及ぼすものと見られ、各方面からの注目を集めています。
この記事が取り上げられた日の日経新聞一面は、どのようなニュースがあったのでしょうか?
気になる方はこちら2024/11/6の日経新聞一面は?
米大統領にトランプ氏 世界脅かす大国の身勝手について
記事概要
2024年の米大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏が返り咲き、第47代大統領に選出されました。
この結果を受け、国内外でトランプ氏の再選が世界にどのような影響をもたらすかという議論が巻き起こっています。
トランプ氏は国内の分断を利用し、自らの支持基盤を強固にすることで政権を取り戻したと言えますが、これが世界の平和と安定にどのような影響を及ぼすかが懸念されています。
トランプ支持者と反対派の意見の相違
今回の大統領選では、特に「激戦州」と呼ばれる地域での争いが注目されました。
例えば、南部ノースカロライナ州の大学生コディさんは、共和党の保守的な価値観やキリスト教の理念に共感し、トランプ氏に初めての一票を投じたと述べています。
一方、ワシントンD.C.で語学教育に携わる70代の女性は、トランプ氏の復権を恐れ、海外移住も検討していると言います。
こうした支持者と反対派の対立は、米国内の分断を象徴しており、この分断がどのように今後の米国や世界に影響を及ぼすかが問題となっています。
激戦州と大統領選の決定要因
今回の大統領選では、投票総数が過去20年で約3割増加し、約1億6千万票に達すると見られています。
しかし、最終的には激戦州でのわずかな差が大統領の選出を左右しました。
特に共和党が移民問題を重視し、民主党は人工中絶の権利を訴えるなど、両党が異なる主張を展開しましたが、深い政策論争には至りませんでした。
選挙戦は「トランプ氏の人格に対する疑念」と「ハリス氏の能力への疑念」の争いに終始し、結果的にトランプ氏が勝利を収めたのです。
米国が直面する内外の課題
トランプ氏は政敵を「中国やロシアよりも危険な内なる敵」と呼び、分断された社会を自身の政治力の源泉としています。
この分断により、米国は「冷たい内戦」とも言える状態に陥っていると指摘されています。
さらに、ロシアのウクライナ侵略や中東での報復の応酬など、世界は過去4年間で「戦時」のような状況に突入しています。
しかし、今回の大統領選挙では米国の国際的な責任について深く議論されることはありませんでした。
米議会が設置した米国防戦略委員会は、今年夏の報告書で「近い将来に大規模な戦争が起こる可能性がある」と警告しています。
これは、中国、ロシア、イラン、北朝鮮が連携し、米国主導の国際秩序を弱体化させようとしている現状を反映したものです。
ジョンズ・ホプキンス大学のハル・ブランズ教授も「第2次世界大戦前の時代と不気味なほど似ている」と懸念を示しています。
米国の孤立主義とその影響
トランプ氏が支持者から得る大きな支持は、「超大国」の内側で報われないと感じる人々の怒りからきています。
この不満が孤立主義や大衆迎合主義(ポピュリズム)2の基盤となり、世界から米国が孤立する可能性が高まっています。
政治学者ヤシャ・モンク氏も、「米国が国際秩序を形作る役割から手を引くと、中国やロシアが代わりにその役割を担う」と指摘しています。
米国が世界から孤立することで、国際的なパワーバランスが変化する可能性があると警告しています。
今後の見通しと影響
再選したトランプ氏が自身の思惑を推し進め、より自由に行動する可能性があります。
2期目となることで再選を意識する必要がなくなり、国内外での政策がさらに強硬になることが予想されます。
これは米国内での分断をさらに深めるだけでなく、同盟国にとっても困難な課題となります。
特に日本などの同盟国は、米国の孤立主義によって引き起こされる「真空状態」に対処しなければならないという課題に直面するでしょう。
米国の内向きな政策が世界の緊張を高める要因となり得るため、同盟国や国際社会がどのように対応するかが今後の焦点となります。
このような不安定な状態の中で、国際社会は米国の役割と責任について再評価する必要があるでしょう。
この記事が取り上げられた日の日経新聞一面は、どのようなニュースがあったのでしょうか?
気になる方はこちら2024/11/7の日経新聞一面は?
「106万円の壁」撤廃へ 厚生年金の対象拡大 厚労省が調整 週20時間以上に原則適用について
記事概要
厚生労働省(以下、厚労省)は、パート労働者が厚生年金に加入できる条件を緩和するため、現在ある「106万円の壁」を撤廃する方向で制度を改正しようとしています。
この「106万円の壁」とは、年収が106万円を超えると社会保険料が発生するため、手取りが減ることを避けようとして多くのパート労働者が働く時間を調整する現象を指します。
厚労省はこの壁を取り払うことで、年金制度をより公平で持続可能なものにしようとしています。
具体的には、賃金要件である月額8万8,000円以上(年収106万円程度)を撤廃し、週20時間以上働くパート労働者を厚生年金に加入させることを原則とする改正が検討されています。
背景
これまで、厚生年金の適用要件としては、月額賃金が8万8,000円以上、企業規模が51人以上、そして週20時間以上の勤務という条件がありました。
特に年収106万円程度の賃金要件が「106万円の壁」として知られており、多くのパート労働者がこの壁を超えないように労働時間を調整する現象が問題視されてきました。
働く時間を抑えることで、結果的に労働者の手取り収入は減少し、また将来受け取る年金額も少なくなります。
この「106万円の壁」は、パート労働者が収入を増やしにくくするだけでなく、年金制度全体の持続性にも影響を与える問題でした。
さらに、近年の最低賃金の上昇も改正の背景にあります。
2024年度の最低賃金の全国平均は1,055円に達し、パート労働者が週20時間以上働けば月額賃金が8万8,000円を超える地域が増えたことから、賃金要件が事実上不要になると判断されています。
今後の見通しと影響
今回の制度改正により、週20時間以上働くパート労働者であれば、企業規模に関係なく厚生年金に加入できることが想定されています。
これにより、配偶者の扶養内で働くパート労働者も年金の加入対象となり、賃金要件がなくなるため、年間200万人以上が新たに厚生年金の対象になると試算されています。
さらに、個人事業所でも5人以上の事業所がすべて対象となり、厚生年金加入の枠が広がります。
これにより、以下のような影響が期待されます。
- 労働者の年金額増加
厚生年金に加入することで、パート労働者は将来的に受け取る年金が増え、老後の低年金リスクを減らすことが可能になります。
- 社会保険制度の安定化
加入者が増えることで、年金制度への資金が増加し、将来世代への負担軽減につながることが期待されています。
- 労働力の確保
労働時間を抑えずに働ける環境が整うため、企業側もより多くの労働力を確保しやすくなります。
扶養の壁を意識せずに働けることで、パート労働者の労働意欲が高まり、特に人手不足が懸念される業界にはメリットがあると考えられます。
課題と今後の対応
厚労省は、今後の審議会でこの改正案を議論し、2025年に国会に法案を提出する予定です。
しかし、制度の改正にはいくつかの課題も予想されています。
例えば、パート労働者が厚生年金に加入することで負担する保険料が増えるため、手取り収入の減少が懸念されます。
また、企業側も新たな社会保険料の負担が生じるため、小規模事業者にとってはコスト増が問題となる可能性もあります。
それでも、厚生年金の適用範囲を広げることで、将来の年金制度の持続性が高まり、より多くの労働者が社会保障の恩恵を受けられる環境が整うことが期待されています。
まとめ
この記事をまとめると、日本国内でパートタイムで働く人たちが、年間収入が106万円を超えると社会保険料が増えるために、あえて収入を抑えて働く「壁」をなくそうという取り組みです。
この壁をなくすことで、今後は多くのパート労働者が社会保険に加入でき、老後に受け取る年金が増えるなどのメリットがあります。
特に少子高齢化が進む中で、年金制度の安定化が求められる中、このような改革は将来の生活の支えになると考えられます。
この記事が取り上げられた日の日経新聞一面は、どのようなニュースがあったのでしょうか?
気になる方はこちら2024/11/9の日経新聞一面は?
全体のまとめ
今週の一面記事を振り返ると、労働や社会保障の変化、そして国際的な政治の動きがそれぞれ異なる視点から取り上げられているものの、どれも私たちの日常や未来に影響を与える重要な要素です。
これらの記事が示すように、労働条件の改善、将来の保障、そして国際情勢の変動は、それぞれに異なる課題を抱えていますが、どれも日々の生活や将来に関わる重要なテーマです。
私たちは、これらの動きや政策がどのように自分に影響するのかを理解し、自分の生活や働き方を柔軟に調整していくことが大切です。
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