2024/10/22の日経新聞一面は?

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今日の朝刊では、以下の4つの記事が取り上げられています。それぞれの記事について、わかりやすく解説していきます。

企業年金の積み立て改善について

記事概要

企業年金の積み立てとは、企業が将来従業員に支払う年金のためにあらかじめ資金を積み立てる制度です。

特に「確定給付企業年金(DB)」は、従業員が退職後に受け取る年金額が企業によって事前に確定されているタイプの年金制度です。

企業は将来支払う年金の総額を計算し、それに見合う資産を積み立てなければなりません。

この年金資産が企業の負担となることがあり、特に株価の低迷や低金利の時代には、企業にとって大きな負担となることがあります。

2023年度の企業年金の積立比率は、前年度より10ポイント増加して93%に達し、初めて9割を超えました。

積立比率とは、企業が将来支払う年金額に対して、どれだけの資産を積み立てているかを示す指標です。この比率が高いほど、企業は年金の支払い準備が進んでいるとされます。

株高と金利上昇が追い風

この改善の主な要因の一つは、株価の上昇です。企業年金の運用では、株式や債券などに投資して資産を増やすことが一般的です。

2023年度は株式市場が好調で、多くの企業の年金資産が増加しました。例えば、西武ホールディングスでは、年金資産が前年度比16%増加したとのことです。

さらに、金利の上昇も企業年金の改善に大きく貢献しています。年金の負債(将来の支払い義務)は、金利が上がるとその負債額が減少する傾向にあります。

2023年度も、企業が計算に使用する金利が上昇したため、年金債務が減少し、企業の年金積立状況が改善しました。

例えば、パナソニックでは、年金債務が約10%減少したと報告されています。

社員への還元と影響

企業が積立状況の改善を背景に、社員への還元を進める動きも出ています。

例えば、コーセーは市場金利に連動する年金制度を採用しており、2024年6月から2027年3月までの期間限定で、年金の給付利率を一律5%に引き上げることを発表しました。

これは、物価の上昇や運用成績の改善を考慮して、社員や年金受給者の生活を支援するための措置です。

また、企業業績にも影響があります。大和ハウス工業では、年金運用による影響を業績に反映させており、2024年3月期に465億円の営業増益を記録しました。

かつての低金利や株価低迷の時代には、年金運用が企業業績の重荷となることが多かったですが、現在の改善した運用環境は企業にとってプラスに働いています。

今後の見通しと課題

今後の課題としては、物価高に対応した年金制度の設計が挙げられます。

物価が上昇すると、将来的に受け取る年金の実質的な価値が下がってしまうため、年金制度の持続可能性を考慮しつつ、社員にとって魅力的な仕組みを設計する必要があります。

第一生命の遠藤氏は、運用成績に応じて年金給付額が連動する仕組みを検討する企業が増えていると指摘しています。

さらに、企業年金の運用は、金融市場の動向に大きく左右されるため、今後も株式市場や金利の変動に注視する必要があります。

現在は株高や金利上昇が企業年金にプラスに働いていますが、逆に株価が下落したり、金利が低下したりする局面では再び企業にとって年金運用が負担となる可能性もあります。

まとめ

全体的に見て、企業年金の積み立て状況が大幅に改善していることは、企業と従業員の双方にとって良いニュースです。

特に、積立比率が9割を超えたことは、将来の年金支払いに対する不安を軽減し、企業の経営負担を軽くする効果があります。

また、積立状況の改善を受けて、社員への還元や年金受給者への支援も進んでおり、物価高の影響を考慮した施策が取られています。

しかし、今後も金融市場の変動には注意が必要であり、企業年金の制度設計においては、持続可能性や社員の生活支援をどうバランスさせるかが重要な課題となります。

就活生へのセクハラ、企業に防止義務について

この記事は、就職活動を行っている学生に対するセクシャルハラスメント(セクハラ)を防ぐため、厚生労働省が企業に対して新たな義務を課す法改正を検討している内容を報じています。

具体的には、学生と企業の面談におけるルールを策定し、相談窓口を設けることを企業に義務づける方針です。

現在、こうした取り組みは企業の自主性に任されている状態であり、法的な強制力がありませんが、今回の法改正で義務化される可能性があります。

背景

近年、就職活動を行う学生に対して、企業の社員や面接担当者からのセクハラが問題視されています。

特に、インターンシップや採用面接の場でセクハラ被害が発生するケースが多く、学生が弱い立場にあるため、声を上げにくい状況が続いています。

厚生労働省が2024年1月に行った調査によると、インターンシップ中に少なくとも一度はセクハラ被害を経験した学生は30.1%に達し、その内容も多岐にわたります。

例えば、「性的な冗談やからかい」が38.2%、「食事やデートへの執拗な誘い」が35.1%、さらには「性的な関係の強要」も19.7%に及びます。

このような状況下で、学生は「セクハラの被害を申し出れば選考で不利になるかもしれない」という不安を抱えているため、声を上げることが難しいとされています。

現在、日本の法律では、男女雇用機会均等法1が企業に対して従業員へのセクハラ防止を義務づけています。

しかし、この法律は就職活動中の学生には適用されず、学生を守る法的な枠組みが不十分な状態にあります。

こうした現状を受けて、厚労省は就活生に対するセクハラを防ぐため、法改正を通じて企業にルール策定や相談窓口の設置を義務づける方針を打ち出しました。

この法改正は、「雇用管理の延長」として学生にも適用されることが検討されています。

企業の透明性向上と海外との比較

法改正が進めば、企業の採用活動における透明性が高まることが期待されます。

現在、多くの企業は自主的にセクハラ防止策を講じているものの、義務化されていないため、その実効性には限界があります。

今回の法改正によって、企業が積極的にルールを整備し、学生に対して安全な環境を提供する義務が生じることは、就活生にとって安心して採用活動を行える大きな後押しとなるでしょう。

また、日本は海外と比べると、こうした取り組みが遅れていると指摘されています。

例えば、イギリスやドイツ、フランスでは、求職者に対するハラスメントを禁止する法律がすでに存在しています。

こうした国々では、採用活動においてもハラスメント対策が厳しく求められており、日本が同様の法改正を行わない場合、優秀な人材を海外企業に奪われる懸念もあります。

つまり、日本企業が人材獲得競争において後れを取る可能性があるため、国内でも早急な対応が求められています。

今後の見通しと課題

この法改正については、労使の代表者などが参加する労働政策審議会での議論が進められており、2025年の通常国会に関連法の改正案が提出される見込みです。

具体的には、学生と企業が面談する際のルールをどのように設計するか、また企業にどの程度の義務を課すべきかについて、詳細な議論が行われる予定です。

一方で、この法改正が実現したとしても、実際に企業がどのように取り組むかが重要な課題です。

法律が義務づけても、企業が形だけの対策に終わってしまう可能性もあり、実効性のある制度設計が求められます。

また、学生側もセクハラ被害を相談しやすい環境を整備することが必要です。

例えば、企業内だけでなく、外部の第三者機関が学生からの相談を受け付ける窓口を設けるなど、より中立的な立場でのサポートが求められます。

まとめ

今回の法改正は、就職活動を行う学生をセクハラから守るための重要な一歩です。

これにより、企業の採用活動における透明性が向上し、学生が安心して就職活動を行える環境が整備されることが期待されます。

また、海外との競争力を維持するためにも、こうした法的枠組みの整備は不可欠です。

ただし、法改正が実現した後も、企業が実効性のある取り組みを行うための制度設計や、学生が安心して相談できる環境を整えることが、今後の課題となるでしょう。

日経・FT感染症会議について

この記事は、「日経・FT感染症会議」について報じた内容です。

この会議は、日本経済新聞社とイギリスのフィナンシャル・タイムズ(FT)が共催しており、感染症に対する社会の強さ、つまり危機に耐えられる社会をどう作るかが議論されます。

会議は2日間にわたり開催され、産官学(産業界、政府、学術界)の専門家たちが集まり、感染症に関する様々な課題について意見交換を行います。

議論の中心となるのは「人材育成」「資源の戦略的投入」「イノベーション」「リスクコミュニケーション」の4つのテーマであり、これらはコロナ禍で明らかになった問題に対応するために重要視されています。

背景と目的

この会議の背景には、2020年から始まった新型コロナウイルスのパンデミックがあります。

コロナ禍では、医療システムの脆弱性や誤情報の拡散、ワクチン開発の遅れなど、多くの問題が浮き彫りになりました。

これにより、感染症危機に対する社会の備えがいかに不十分であったかが明らかになりました。

また、政府も2024年7月に新型コロナの経験を踏まえて、「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」を抜本的に改定しました。

この計画の改定では、次の感染症危機に備えた具体的な対策が強化されています。

特に、物資の確保や誤情報(フェイクニュース)への対応が重要視され、これからの感染症危機に対する平時からの準備が進められています。

この会議は、こうした背景のもとで開催され、今後の社会にとってどのような対策が必要かを議論する場となります。

議論されるテーマ

会議では、特に以下の4つのテーマが議論されます。

1.人材育成

感染症に対応できる専門家や医療従事者の育成が、今後の危機に対する鍵となります。

コロナ禍でも、多くの医療機関が逼迫し、人手不足が問題となりました。

そこで、今後は医療現場で即戦力となる人材を育成するための教育や訓練が重要です。

2.資源の戦略的投入

感染症に対して効果的に対応するためには、限られた資源をどのように配分するかが課題となります。

医療物資やワクチン、治療薬などの戦略的な管理と供給が求められます。コロナ禍では、特にマスクや消毒液が不足したことが記憶に新しいでしょう。

このような事態を防ぐために、物資の計画的な備蓄や管理方法が検討されます。

3.イノベーション

感染症対策には、医療技術の進化が欠かせません。

ワクチン開発や治療法の進歩、さらにはデジタル技術を駆使した感染追跡や診断技術の向上が期待されています。

コロナ禍では、リモート診療やAIを活用した医療技術が注目されました。今後は、さらなる技術革新をどのように進めるかが議論されます。

4.リスクコミュニケーション

感染症に関する正確な情報を、迅速かつ効果的に社会に伝えることが重要です。

コロナ禍では、誤情報や陰謀論が広まり、社会的な混乱を引き起こしました。

そのため、政府や医療機関がどのようにして信頼性の高い情報を伝えるか、そして市民がそれをどのように受け止めるかが今後の課題となります。

リスクコミュニケーションの改善が、危機対応の成否を左右すると言っても過言ではありません。

参加者と今後の方向性

会議の議長を務めるのは、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の会長を担った尾身茂氏です。

尾身氏は、日本国内でのコロナ対策の中心的な役割を果たしてきた人物であり、彼の視点から現在の感染症対策の課題や今後の方向性が議論されると期待されています。

また、前厚生労働大臣の武見敬三氏も登壇予定で、政治的な観点からの意見も交わされるでしょう。

政府は、次の感染症危機に備えてさまざまな準備を進めていますが、最も重要なのは、平時からの備えをどれだけ充実させられるかです。

この会議で話し合われる内容は、今後の日本社会の感染症対策に大きな影響を与えることになるでしょう。

今後の見通しと影響

この会議の結果は、日本国内だけでなく、世界的な感染症対策にも影響を与える可能性があります。

特に、日本がどのようにして次の感染症危機に備えるかは、国際的な注目を集めています。感染症対策は一国だけで完結するものではなく、国際的な協力が不可欠です。

特に、グローバルなワクチン供給や医療物資の共有、技術革新の促進など、各国が協力して取り組むべき課題が多くあります。

一方で、国内の企業や医療機関、さらには市民社会にとっても、この会議の議論は重要です。

感染症に強い社会をつくるためには、日常的な準備やリスクコミュニケーションの向上が求められます。

例えば、企業はリモートワークや在宅勤務の環境を整える必要がありますし、医療機関はパンデミック時に対応できる設備や人員の確保が求められます。

まとめ

第11回日経・FT感染症会議は、感染症危機に強い社会をつくるための重要な議論の場です。

コロナ禍で浮き彫りになった課題を踏まえ、今後の社会がどのように対応していくか、産官学の専門家たちが知見を共有し合います。

この会議を通じて、日本は次の感染症危機に対してより強固な備えを進め、国内外の協力体制を強化することが期待されています。

時代は「モチベ管理」職について

記事概要

この記事は、企業の成長における「管理」と「自由」のバランスをテーマにしたものです。特に、若い世代の社員に対する「モチベーション管理」の重要性について触れています。

ここでは、新興企業「Grand Central」を例に、部下の行動を細かく管理しつつ、その成長を促す方法が取り上げられています。

Grand Centralでは、資料作成や会議などの業務時間をデータ化し、それに基づいて部下を指導します。

たとえば、ある業務が標準時間を超えた場合、負担を軽減するためのサポートが行われ、時間が短い場合は目標の見直しが行われます。

このような「管理」を通じて、部下は自分の成長や成果を実感でき、やる気を維持する仕組みが整っています。

離職率が低いことも、モチベーション管理がうまくいっている証拠です。同社の離職率は数%で、CEOの北口氏も「高いモチベーションが生産性を維持する鍵だ」と述べています。

この記事では、自由度が高すぎる職場が逆に社員の成長を阻害するリスクについても警鐘を鳴らしています。

背景

在宅勤務やフレックス制度など、働き方の自由が進む中で、企業のマネジメント方法にも変化が生じています。

多くの企業は「自由」な働き方を取り入れてきましたが、米国の調査によると、半数以上の社員が仕事に対して積極的でなくなっていると報告されています。

日本でも、特にZ世代と呼ばれる若い世代(18~27歳)の転職志向が高まりつつあり、これまでの管理方法が限界を迎えつつあるのが現状です。

自由すぎる環境では、社員はキャリアに対する焦燥感を覚えやすくなります。

PwCジャパンの調査によると、Z世代の若者の54%が1年以内に転職を考えており、これは前年と比べて23ポイント増加しています。

今後の見通し

今後の課題は、いかにして「管理」と「自由」を両立させながら、社員のモチベーションを高め続けるかにあります。

特に、管理職の役割が重要になります。サイボウズでは、一度管理職を廃止しましたが、社員の不満が高まり、最終的に管理職を復活させました。

この経験からも、管理職の存在が企業の成長や社員のモチベーション管理において不可欠であることが示されています。

また、米国と比較して、日本の管理職の報酬が低いという問題もあります。日本の課長の平均年収は約1500万円で、米国の半分以下です。

適切な報酬やサポート体制がなければ、次は管理職が逃げ出してしまうリスクが高まります。

まとめ

この記事からわかるように、今の時代においては「自由」だけでなく、適切な「管理」が企業の成長と社員のモチベーション維持に必要です。

特に、若い世代は成長ややりがいを感じられなければ、すぐに他の企業へと移ってしまう傾向があります。

今後、企業は管理職の重要性を再認識し、適切なサポート体制や報酬を用意することが求められるでしょう。

モチベーション管理の成功は、企業全体の生産性や成長に直接的な影響を与えます。

これからの企業運営には、自由と管理のバランスをうまく取り入れ、社員一人ひとりがやりがいを感じられる環境を作ることが重要です。

全体のまとめ

これらの記事の共通点は、個々の人々がどのように働き、社会や企業がそれにどう応えるかという点にあります。

企業年金の増加は、企業が社員を支える努力をしている証拠であり、一方で就活生のセクハラ防止策の義務化は、若者を守るための取り組みです。

また、感染症対策やモチベーション管理は、企業や社会が直面する新たな課題にどう対応するかを考えさせられます。

私たち一人ひとりも、自分の将来や健康、キャリアに対して積極的に考え、適切な情報を得て行動することが重要です。

働く環境や企業のサポート体制に関心を持ちつつ、自分にとって最良の選択を見つけるための努力を怠らないことが、今後の社会で生き抜く力となるでしょう。

ポイントとなる用語解説

  1. 男女雇用機会均等法
    職場において性別に基づく差別を禁止し、男女が平等な雇用機会を得られることを目的とする日本の法律です。雇用の募集・採用、配置・昇進、待遇などの分野での男女差別を禁止し、女性の育児や介護に関する配慮も規定しています。1986年に施行され、以降、改正を重ねて女性の職場での地位向上に貢献しています。 ↩︎

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